米国公認会計士(USCPA)の資格を取得しようと考えているが、日本で働く場合には、就職や転職で有利な資格になるのか?そもそも、国内で働ける企業がどれほどあるのか気になる人もいるでしょう。
ここでは、米国公認会計士(USCPA)資格取得後に、日本で働く際にどんな企業で働けて、どんな仕事内容があるのかをご紹介します。
目次
転職に有利?日本で働く際のUSCPA資格保持者の評価ポイント
まず、米国公認会計士(USCPA)の資格を持つと、就職や転職、仕事に活かせるスキルは下記になります。
IFRSという国際会計基準に対応する基礎知識がある
一般的な日本の企業では、IFRSという国際会計基準が採用されておらず、日本独自の会計基準がベースとなっていますので、国際的に通用しない点があります。
しかしながら、日本企業で海外進出しているグローバル企業も多く、海外との取引関係からも海外企業が導入しているIFRSという国際会計基準に合わせる必要があります。
その際、このIFRSの基礎知識がある人材、USCPA保持者が求められます。
英語・会計・IT・法律・ファイナンスの知識がある
米国公認会計士(USCPA)の試験は全て英語で行われます。USCPAの試験科目も
試験科目 |
FAR:Financial Accounting and Reporting(財務会計) |
BEC:Business Environment and Concepts(ビジネス環境及び諸概念) |
AUD:Auditing and Attestation (監査及び証明業務) |
REG:Regulation (諸法規) |
と、USCPA試験では会計や法律以外にもITやファイナンスなど幅広い分野が出題されていて、グローバルなビジネスパーソンに必要な知識やスキルが学べます。
世界的に評価されている国際資格
USCPAはアメリカの資格ですが、世界的に評価されていて、世界で通用する国際資格です。
例えば、アメリカ以外でも、オーストラリア、カナダ、香港、ニュージーランド、アイルランドメキシコなどでも現地の会計士と同じ業務が行えたりします。
上述のとおり、日本でも海外進出する企業は数多くありますので、海外との取引関係においてもUSCPAスキルが求められる業務で活躍が期待されます。
米国公認会計士と日本の公認会計士の違い
ただし、米国公認会計士(USCPA)の資格を得ても、日本の公認会計士と同じ業務ができるかというと、そうではありません。
USCPAは、日本の公認会計士資格とは違い、日本での会計監査業務の提供ができず、会計監査以外のアドバイザリー業務などを行うことが考えられます。
以下に、米国公認会計士と日本の公認会計士の業務内容の主な違いを示した表を示します。
項目 | 米国公認会計士 | 日本の公認会計士 |
---|---|---|
業務内容 | 財務諸表監査およびコンサルティング | 税務や財務コンサルティングなど幅広い業務 |
監査報告書の種類 | 直接監査報告書(Unqualified Opinion),条件付き監査報告書(Qualified Opinion),保留意見監査報告書(Adverse Opinion),重大な不合意事項がある監査報告書(Disclaimer of Opinion) | 個別財務諸表の監査報告書, 取締役会報告書の監査報告書など |
監査の目的 | 財務諸表に基づいて企業の財務状況を評価する | 財務諸表以外の業務に関しても含め、会社の経営状況についてアドバイスをすることもある |
監査報告書における説明 | 財務諸表の正確性について合理的な保証を提供する | 監査対象の範囲, 監査の方法, 監査基準, 監査期間などを説明する |
規制機関 | 米国公認会計士協会(AICPA)および公認会計士試験委員会(NASBA) | 会計検査院および日本公認会計士協会 |
試験要件 | 4部構成の試験(Auditing and Attestation, Business Environment and Concepts, Financial Accounting and Reporting, and Regulation)および経験要件 | 4部構成の試験(簿記論、財務諸表論、税法および商法、監査論)および実務要件 |
継続的な教育要件 | 年間40時間の継続的な教育要件 | 年間20時間の継続的な教育要件 |
よって、米国に本社を置くような外資系企業やグローバル企業、監査法人、会計事務所、会計コンサル、総合商社の経理財務などの企業では、USCPA資格取得者の方が断然有利になるようなケースもあります。
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日本で働く場合に米国公認会計士(USCPA)の資格が有利な就職・転職先
そんな強みを持っている米国公認会計士(USCPA)は、就職や転職など日本で働く際にどんな企業で有利になるでしょうか?
日本で働く場合、『米国公認会計士(USCPA)の年収は高い?独立・外資系転職後の年収は?』の記事でも紹介していますが、主に下記のような企業で需要があります。
企業 | 仕事内容 |
監査法人 | 財務諸表監査、内部統制監査、金融商品取引法に基づく内部統制監査(J-SOX)、金融アドバイザリーサービス、その他証明業務など |
会計事務所 | M&A実務支援、Financial Advisory Service、組織再編・IPO・企業再生コンサルティング、企業・無形財産等評価サービスなど |
会計コンサル | 統合デューディリジェンス、統合戦略・方針立案支援、スタンドアロン・セパレーションコスト分析など |
総合商社の経理財務 | 決算・税務関連業務、営業グループの会計業務、国内外事業会社や海外現地法人での管理業務など |
監査法人・会計事務所で働く
監査とは
監査とは、企業の業務、経営、財務状況について、法令や社内規定を遵守し、適正に業務が行われているかなどを、公正な立場の第3者である監査人が判断し、チェックすること一連の業務のことです。
監査部門やアドバイザリー部門でUSCPA資格者の採用が増加
米国系大手会計事務所では、日本進出の米国系企業に対して、米国監査基準の監査業務も行うため、USCPAのニーズがあります。
Big4と呼ばれる世界4大会計事務所として、
・デロイト トウシュ トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu、略称:DTT)
・KPMG
・アーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young、略称:EY)
・プライスウォーターハウスクーパース(PricewaterhouseCoopers、略称:PwC)
の4つがあり、これらの企業と提携している監査法人が日本には4つあります。
【大手4大監査法人】
4大監査法人 | 特徴 |
トーマツ | デロイト トウシュ トーマツと提携している監査法人 |
あずさ | KPMGと提携している監査法人 |
EY新日本 | アーンスト・アンド・ヤングと提携している監査法人 |
PwCあらた | プライスウォーターハウスクーパースと提携している監査法人 |
大手監査法人の監査部門やアドバイザリー部門では、USCPA資格者の採用が増加傾向にあるとのことです。
コンサルティングファームで働く
コンサルティングファームとは、企業が抱える問題や経営課題に対して、解決に導く企業のことです。
国際ビジネスコンサルティング、国際税務コンサルティング、会計システムコンサルティングなど、企業コンサルを行うコンサルティングファームでも、IFRS(国際会計基準)の会計知識を持つUSCPA資格者が求められています。
海外進出企業、総合商社の経理・財務などで働く
海外進出企業や海外子会社、総合商社などの経理・財務・経営管理業務において、英文財務諸表の知識が不可欠です。その際に、海外取引を行う必要がある日本企業内でも、経理部や財務部などのセクションでUSCPAの知識が求められます。
米国公認会計士(USCPA)の受験資格・単位要件など
なお、USCPA試験をこれから受ける方もいらっしゃるでしょう。
その場合、米国公認会計士(USCPA)の受験資格については、以下の条件を満たす必要があります。
米国公認会計士(USCPA)の受験資格 | |
学位要件 | 単位要件 |
・4年制大学を卒業している ※在学中や高卒・短大卒でも受験可能な州もある | ・会計単位・ビジネス単位を一定数以上取得していること |
なお、USCPAの受験資格の詳細に関しては『【大卒/高卒】米国公認会計士(USCPA)の受験資格と各要件』を参考にしてください。
日本で働くUSCPA資格者の勤務先例
日本で働くUSCPA資格者は、どんな勤務先で働いているのでしょうか?
USCPA予備校・アビタスによると、アビタスの卒業生の場合は、以下の勤務先例があります。
日本で働く場合の勤務先例|監査法人・会計事務所・コンサルティングファーム
【監査法人・会計事務所・コンサルティングファームの勤務先例】
監査法人トーマツ、トーマツコンサルティング、アビームコンサルティング、中央青山監査法人、プライスウォーターハウスクーパースフィナンシャル・アドバイザリー・サービス、IBMビジネスコンサルティングサービス、新日本監査法人、新日本アーンストアンドヤング、あずさ監査法人、KPMGビジネスアシュアランス、他多数(敬称略) |
※アビタス卒業生の勤務先例より引用
日本で働く場合の勤務先例|経理・財務
【経理・財務の勤務先例】
アディダスジャパン、アメリカンエキスプレス、アリコジャパン、EDS、AIG、HSBC、SAPジャパン、クレディリヨネ銀行、ゴールドマンサックス証券、AIGエジソン生命保険、GE横河メディカルシステム、シティバンク、スターバックスコーヒージャパン、日本ゼネラルモータース、DHL、デルコンピューター、ドイツ証券、日本IBM、日本オラクル、日本コカコーラ、日本コダック、日本サンマイクロシステムズ、日本トイザらス、日本ヒューレットパッカード、モトローラ、ファイザー製薬、フィリップモリス、フォード自動車日本、富士ゼロックス、プルデンシャル生命、メリルリンチ証券、ロームアンドハースジャパン、他多数(敬称略) |
※アビタス卒業生の勤務先例より引用
日本で働く場合の勤務先例|金融機関(三菱商事、三井物産など)
【金融機関の勤務先例】
三菱商事、三井物産、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、オリックス、ミレアホールディングス、ソニー生命保険、野村證券、大和証券、野村総研、ソニー、シャープ、キャノン、資生堂、武田薬品工業、伊藤忠商事、花王、トヨタ自動車、日産自動車、日本たばこインターナショナル、NTTコミュニケーションズ、他多数(敬称略) |
※アビタス卒業生の勤務先例より引用
日本で働く際の米国公認会計士(USCPA)の年収
次に、日本での米国公認会計士(USCPA)の年収を各レベルと企業規模ごとにご紹介します。
よく「USCPA資格」を取っても意味がないと言われることもありますが、『米国公認会計士(USCPA)が意味ない5つの理由とメリット』でもお伝えしているとおり、意味がある人には就職・転職時にとても武器になります。
大手4大監査法人(BIG4)と中堅クラス監査法人の年収比較
日本での米国公認会計士の大手監査法人と中堅クラスの監査法人の年収では、大手に比べて中堅クラスの方が少し低くなります。
【日本での米国公認会計士の大手・中堅監査法人の年収比較】
役職・レベル | 大手4大監査法人 | 中堅クラスの監査法人 |
パートナー | 1500万円以上 | 1300万円以上 |
シニアマネージャー | 1200万円程度 | 1000~1200万円 |
マネージャー | 900~1100万円 | 800~1000万円 |
シニアスタッフ | 700~850万円 | 500~650万円 |
スタッフ | 500~650万円 | 400~550万円 |
日本の米国公認会計士|4大監査法人(BIG4)の年収
日本において、BIG4とも呼ばれる大手監査法人(BIG4)に位置付けられるのは、以下の4つの会計事務所です。
- あずさ監査法人 (Azusa Audit Corporation)
- PwCあらた有限責任監査法人 (Arata LLC)
- トーマツ (Deloitte Tohmatsu Group)
- EY新日本有限責任監査法人 (EY ShinNihon LLC)
この4大監査法人の年収は、パートナーが1500万円以上、シニアマネージャー 1200万円程度、マネージャーが900~1100万円、シニアスタッフが700~850万円、スタッフは500~650万円と言われています。
日本の米国公認会計士|中堅クラスの監査法人の年収
中堅クラスの監査法人の年収では、パートナーが1300万円以上、シニアマネージャーが1000~1200万円、マネージャーが800~1000万円、シニアスタッフが500~650万円、スタッフが400~550万円となっています。
また、上記以外に、外資系企業やコンサルティング会社であれば、年収500~700万円位で、スキルや能力次第で若い人でも1000万円を超える場合もあり得ます。マネージャー以上になるとより高年収となります。
日本の公認会計士(cpa)の平均年収・給料・初任給は?
日本の公認会計士(CPA)の平均年収・給料・初任給については、以下になります。
- 平均年収:約930万円(2021年度、日本公認会計士協会調べ)
- 平均給料:約59.4万円/月(2021年度、公認会計士協会調べ)
- 初任給:約350万円 – 450万円程度(大手監査法人や企業会計部門など、2019年度の求人情報からの推定)
なお、公認会計士の年収・給料・初任給は、所属する事務所・企業、職種、地域、スキルや経験年数などによって大きく異なるため、上記の数字はあくまで参考値としてご覧ください。
日本の大学卒業者の平均初任給は、2022年卒業者の場合、月給23万〜24万円程度とされていますので、年収が比較的高い職業・職種になります。
USCPAと税理士はどっちが年収高い?
日本においても、USCPAと税理士の年収については、業界や職種、地域、経験年数など多くの要因によって異なります。
しかしながら、一般的にはUSCPAの方が税理士よりも高い年収が期待できる傾向があります。
これは、USCPAがグローバルな会計・ファイナンスの領域で認知度が高く、アメリカの大手企業やグローバル企業において重要なポジションを占めることが多いためです。
一方、税理士は、主に国内での税務に関する専門知識が求められ、年収面でも比較的低い傾向があるとされています。
米国公認会計士(USCPA)の資格を取るメリット
これらを踏まえ、日本人が米国公認会計士(USCPA)の資格を取るメリットは、以下のとおりです。
国際的なキャリアの可能性
USCPAの資格は、米国内だけでなく、国際的な会計業界では高い評価を受けています。
これは、USCPA資格を持つ日本人が、海外で働く機会が増える可能性が高いということを意味します。
グローバルな会計スキルの習得
USCPAの資格を取得するには、国際会計基準や国際税務などの知識が必要です。
これにより、日本人はグローバルな会計スキルを習得することができます。
日本国内での就職・転職にも有利
日本でも、特に外資系企業やグローバル企業の経理・財務部門などから、USCPAの資格は高い評価を受けています。
したがって、日本国内の公認会計士として働く場合にも、USCPA資格を持つことは有利に働くことがあります。
給与アップの可能性
USCPAの資格を持つことにより、就職・転職先の企業にもよりますが、高い給与を得る可能性があります。
特に、グローバルな企業や国際的な監査法人で働く場合には、一般的な平均年収と比べても高い給与が期待できます。
英語力があることをアピールできる
USCPAの資格を取得するには、英語での勉強や読解力が必要です。
これらの経験は、英語力を高める上での貴重な経験になります。
したがって、USCPAの資格を持っていることは、英語力があることをアピールするうえでも有利に働くでしょう。
まとめ 日本で働く際にもUSCPA資格は有利になる
いかがでしたか?
他の資格とは違い、USCPAにしかないアピールポイントが存在し、そのスキルを活かした勤務先例も多数あったのではないかと思います。
これからUSCPAの資格を取ろうと検討している方、USCPAの資格を取って、将来上記のようなグローバル企業で働きたいという方は、戦略的に勉強の計画や各分野への就職や転職を可能にする有益な情報を手にすることが大切です。
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